自動車販売業起業の話

自動車販売業で独立起業をお考えの方に私の起業の経験をお話しします。

持論ではありますが、従業員で働いているときと経営者になることとは全く違うということをご理解していただけるように、しかし決断への勇気となるように述べたいと思います。長文ですのでお時間のある時に読んでください。

自分の力を測る

自分は独立する力を持っているのか、上手く経営をすることができるのか。起業を志す人は誰でも考えることです。

しかしはっきり言っておきます。

答えはありません。そして、そこを考えれば考えるほど自己評価はどんどん厳しくなり、悪循環にハマっていきます。しかしながら地力もないのに勢いだけで独立することは絶対にいけません。私は独立への礎となる自分が持っている環境と、客観的数字はある程度決まっていると考えています。それをクリアしていたら「独立を検討する資格」はあると思います。

培った絶対的顧客と管理顧客の差

起業全般に言えることですが、あなたは商材となる「自動車」が好きですか?単にお客様とわいわいやりながら楽しく働くのが好き、という考えならば他の商材を探すべきだと思います。なぜなら自動車に関しては特に、お客様から「車に詳しいか」「車に関して頼れる存在か」を問われます。そして「社長の嗜好」も見られるからです。

他業種からの自動車起業はあまり聞いたことがないので、みなさんを自動車販売畑、整備畑出身者としてお話しします。これまでのお客様はあなたの「自動車に対する思い」を確実に感じ取っています。小規模店や整備工場系で従業員として働いていたならなおさらです。大規模の販売会社やメーカー系ディーラーで働いているのであれば相当お客様との距離を縮めない限りあなたの自動車に対する思いは伝わりにくいはずです。

これは独立後「お客様がついてきてくれるかどうか」に大きく影響します。大規模店で働いているのであればフリー来店客も多いでしょうしそれなりの台数ノルマをこなさなければならないので顧客管理台帳も分厚いことでしょう。しかし「1000人の管理顧客より10人の絶対的顧客」です。何でも話せる、泣き言も言える、時にはプライベートの関わりもある、それが絶対的顧客です。

管理顧客数を根拠として独立起業しても実際についてきてくれるお客様は1%いるかどうか。これが現実です。管理顧客は「あなた」のお客様ではなく所属していた会社、会社の看板のお客様なのです。小規模店での経験であればお客様との関係はそれよりは濃密であるはずですからパーセンテージは上がります。私の経験上、絶対的顧客を30人持っていればとりあえずはスタートアップできるはずです。そのお客様に独立願望を伝えてみてください。「応援するよ!」と言われ、その言い方やニュアンスで相手の本気度も分かるはずです。

本当に応援してくれ、それぞれの環境でそれなりの人脈を持ち、信頼関係を築けている人をカウントしてみてください。親や身内、友人でもいいですが、やはり「周囲で車を買う話題が出たときに真っ先に自分の名前を挙げてくれるかどうか」は見極めなくてはなりません。

育ててもらったことに感謝して退職する

働いている会社にとっては「独立される」イコール「客を盗まれる」という認識を必ず持たれます。これは避けることができません。だからといって今まで育ててくれた会社と喧嘩別れの末に独立した例をみると、上手く行っている人は少ないようです。どんなに怒鳴られてもひたすら謝り、自分の夢を話し続け必ず穏便に退職しなければなりません。しかしこだわる会社ならば「ウチの会社の客は絶対に相手にしない」と念書を書かせようとするケースもあるはずです。そこは上手に断ります。

「自分が望まなくても相手が来店したら断れません。育てていただいたこの会社から教わった接客の基本ですよね?だからサインはできません。」と。

多分、独立を経験している経営者さんであれば間違いなく前職の顧客を何かしらの基盤にしてスタートアップしているはずです。ただ、メーカー系ディーラーさん出身の方は「顧客を持ってきた」という意識が薄い(顧客量が膨大なため)ので「自分の力だけでやってきた」と言う人も中にはいます。

円満退職にこだわるのは、上っ面のキレイごとであれば「怒りや自己正当化に躍起になり、それくらいの努力をもできないようでは独立しても先は知れてる」と言った方が説得力があるかもしれませんが、現実的には「業界は狭い」というところにあります。

独立開業するなら顧客のことも考え、今の会社とは離れてはいても大分類では同じ地域で開業するはずです。同地域の同業者はライバルでありながら意外と関係性があります。業販取引があったり、オートオークション会場での顔なじみだったり、中販連などの団体で一緒だったり、結構接点はあるものです。

そこであなたの悪評を流されると「関係ない」と思っていても多少なりとも影響を及ぼします。業販の申し込みを断られたり、フリーのお客様に悪評を刷り込まれそれが広まってしまったり、良いことは何一つありません。

何より、あなたを育ててくれた会社を後にするわけですから理由はどうあれ何を言われようが「感謝すべき」なのです。仮に良い関係で退職できればその会社は先輩なのですから今後、心強い存在になることは間違いありません。

もし、独立するにあたって会社から猛攻撃を受けたにもかかわらず、交渉や説得の上で最終的に円満退社、かつ支援の約束を取り付けることができたなら、あなたは人間的に非常に優れた資質を持っています。たとえ自分や相手が表面上だけ、本心は別であってもです。

決心まで

誰だって失敗することを先に想像します。それを薄くさせるために上手くやる条件、できる理由を考えます。

環境と自分の性格を関連づけて想像してみる

前述した「絶対的顧客」と「円満退社」は外部要因の一つです。あとは残る外部要因と自分自身の力を知ることで決心はつくはずです。

残る外部要因は環境的部分なので後述します。まずは自分についてです。

繰り返しますがあなたは車が大好きですよね?別にそれほどでもない、これしか思いつかない、これしかできない、という気持ちならあきらめるべきです。普通に同業他社に就職した方が良い、または違う業界があなたの天職かもしれません。

車が好きだ、お客様も好きだ、接客も好きだ、これで第一関門はクリアです。次はあなたの生活状況。妻子持ちですか?人に自分の弱さを語れますか?とりあえず健康ですか?

家族がいると、起業の障害にもなりますしターボにもなります。独身で独立起業するより「逃げ道がない」「責任がある」分、生みの苦しみは大きくなりますが、私はその苦しみの経験は肯定的に考えます。苦しむということは他人を思いやることができる、責任感があるということです。きちんとした人ほどその部分は弱いものですから。

そして「自分の弱さを語れるか」については単に私の主観に過ぎないかもしれませんが、これまでの私の周囲では、いつでもポジティブ、いつでも強気、いつでも楽天的、大雑把で豪快な人ばかりがなぜか悲しい結末を辿ったからです。単なる偶然かもしれませんが、何度も同じパターンを見せつけられるとやはり根拠があるのではないかと思うのです。

一方、一見経営者に向いていなさそうな小心者だったりネガティブな人だったり神経質な人だったり不安ばかりを口にしている人の方が今も元気に仕事をしています。私は企業経営の大切な要素は収益の大小よりも永続性だと考えているのでそのように思うのかもしれません。

さて、あなたはどうですか?悲しい結末と書いた前者の性格でも最低限「慎重さ」「決して強がらない」性格を持ち合わせていれば大丈夫かと思います。弱さが必要なのは、人に助けられる有難さと感謝を理解しているからです。そしてそれは周囲に対し隠すような恥ずかしいものではないと思うのです。

金銭感覚と性格

外部要因としてはまず「借金」をどうとらえるか、を挙げます。

企業活動においては借り入れは避けられません。その恐怖におののきますか?できれば借金はしたくないですか?

「いや、怖くない」と言う人は経営者に向いていません。もしかするとそんなあなたは借金することをいとわない性格ではありませんか?

語弊はあるかもしれませんが、カードをよく利用する人、しかもリボ払いやキャッシングまで抵抗なくやっている人は絶対に起業しない方がいいです。

別のページにも書いていますが、借り入れには良い借り入れと悪い借り入れがあります。これらは悪い借り入れです。一方、適正な自動車ローンや住宅ローンは良い借り入れだと考えています。

悪い借り入れに抵抗が無くなっている人は事業資金の借り入れも際限なくしてしまう可能性が大です。これに「楽天的性格」が組み合わさると事業の将来像、財務状況すら正確に把握できなくなります。だから性格は重要なのです。

いっときのIT系の起業ブームやバイオ起業のようにテクニカルな資金計画、事業計画(ファンドの利用やM&A、企業規模に見合わないブランディング戦略など)でいきなり億単位のカネを借り入れたり動かすのは別次元の話。自動車販売は「動かす金の大きい八百屋さん」と考えてください。

いえ、自動車販売は日銭を稼ぎにくい分、八百屋さんより厳しいかもしれません。自動車販売業、特に中古車は「マグロの一本釣り」に例えられます。

まずは金銭感覚というハードルでした。これを超えることができたならあとは自己資金など具体的な部分が見えてくれば決心できるはずです。ちなみに、起業に向いていない性格の人は「雇われていてこそ成功する」性格でもあります。転職によるステップアップや今の環境での成功を目指した方が近道です。

自己資金のハードル

スタートアップの形態や規模にもよりますので一概には言えませんが、私が思うにまずは最低500万です。もちろん自分でそんな自由にできる貯金があれば誰も苦労はしません。チマチマ貯金し50歳くらいで起業しても、トレンドに対するアンテナの感度が重要である自動車販売なら逆に上手く行かなくなる可能性も出てきます。

店舗型の自動車販売店であればある程度の初期投資が必要です。一番コストがかからないのは事務所と保管場所のみで開業し、紹介案件の対応に特化してスタートアップすることです。私がそうでした。

私のような無店舗型でも400万プラス借入200万で始めました。そこから初期投資が100万(事務所確保、会社設立含む)だったので実質運転資金は500万からスタートしたということです。

創業資金の借り入れは行うべきです。おおよそではありますが、しっかりした事業計画書を作れば自動車販売業であれば自己資金と同額くらいまで、店舗への設備投資を要するなら自己資金の2~3倍くらいは借りることができると思います。一般では10倍と言われていますが、業種にもよりますし何より「借りれるだけ借りよう」という借り入れは私の言う「悪い借り入れ」に変化しやすいので綿密な計画が必要なのです。ここでの「しっかりした」は後述します。

とはいえ自己資金なんてそう簡単に出てきません。起業を目指して10年計画で貯金でもしない限りそんなまとまったお金は貯まりませんし、時間も削ぐことになります。そんな時はやはり周囲に頭を下げるしかありません。

親、親類、友人から「催促なしのあるとき返し」で借りましょう。それも無理、その申し入れすらできない人は残念ながらここで退場ということになります。これは環境にもよるので心苦しいのですが、自己資金ゼロとか100万とかでは事業を行うこと、借り入れをすることはまずできないのです。

プレゼン能力や人脈、コミュニケーションスキル、論理的思考を持っていればファンド系などリターンが明確な借入先という選択肢も考えられますが、それらを自己資金や出資金として利用するのは自動車販売業の場合は環境的に不利(事業に新規性や伸びしろが少ないのでリターンの要求に耐えられなくなる)なので絶対にやめてください。もし話があったら「リターン以外の裏がある」と思って間違いないです。

私も自己資金はありませんでした。家庭を持っていたため貯金は全て家族名義の口座へ。当時私名義の口座は生活口座のみ。もちろん家族は猛反対だったので最後まで一銭も使わせてもらえませんでした。最終的に、昔から折り合いが悪く10年間音信不通にしていた父親に頭を下げたのです。あの時の葛藤、悶絶は思い出したくもないほどでしたが、結果、自分のおかしなプライドよりも志を取る判断ができ、「助けられて」今があるのです。

空想をカタチに

頭の中で思い描いたことを具体的にカタチにしていきます。別に輪郭をはっきりさせる必要はありません。「ハコ」がきちんとできるまでは試行錯誤しながら輪郭線のピントを合わせていけばいいのです。

事業計画はネガティブ思考で

事業計画書は大体5年くらい先までの事業・収支の計画を書き込む書類です。私の場合は起業家向けの物件の入居審査と創業資金の借り入れ審査の際に提出しました。

前職の時からそのあたりの書類作りは慣れていたので、会社の設立趣意書(何をやる会社でどんな社会的な地位を目指すかを書く)と事業計画書を両方作成しました。

どの審査にも「ひな型」を渡されていましたが、それは使わずに私が独自に作成したそれらを提出しました。

単純な自動車販売業であれば設立趣意書までは必要ないと思います。「しっかりした」事業計画書を作りこめば大丈夫でしょう。

コツは「謙虚・慎重」に尽きると思います。何でも華やかに右肩上がりにすればOKというものではありません。将来を予測して下の値を取ることです。

例えば、スタートアップは自分一人、在庫は10台、プレハブ事務所、できれば居抜きで。当面1年くらいは月販5台~8台を目標に。台当たり利益を13万と見積もって月の粗利は65万。店舗型で在庫を抱えれば初期投資分の損失も計上します。常に在庫が回転し続けることはありませんので、オークションなどで長期在庫を損切り処分することもあり得るからです。

半年後に従業員を一人入れると人件費が増加します。しかし2人だからといって月販が10台、なんて書くと印象が悪いです。月販7台、サービス売り上げも多少生まれるがしばらくは赤字。

しかし周知が進み、広告の効果もあり半年後には月販10台。自動車販売は売上が上がるほど経費もかさんできます。その点も漏れなく書きます。

3年目くらいに月販10台を超えると場所も不自由になるかもしれません。しかし引っ越すにはまた数百万のカネがかかります。しかし月販10台なら車種構成にもよりますが年商も5000万から1億近くにはなります。創業融資も半分くらいは返済している計算です。なので新たに借り入れをすることを書き込んでもよいかもしれません。

「5年間地道に一人でお金を貯めます」じゃダメなのです。きちんと、順調にいけば起こるであろうイベント(従業員を入れたり、引っ越したり)に対処した、しかも説得力ある数字で計算した内容を書くことです。かつ売上げと利益は謙虚に、しかし少しずつでも内部留保しながら損失イベント(在庫の損や既存、アフターサービス損失など)に備える姿勢をアピールするのです。

固定費は簡単に計算できます。問題は流動的な支払いにどう対処するか、そこを謙虚さ、慎重さと同時に見られると考えています。

事業計画なんて絵に描いた餅に過ぎません。なのになぜ作るのか、そこを考えるとやはり事業計画書は数字もさておき「経営者としての資質や性格」を見られる材料なのだと思います。

ちなみに私は我が「自動車生活総合研究所」は純粋な自動車販売ではなくちょっとひねった(非営利事業も行う)事業計画とともに理念を書いた設立趣意書をもって創業融資を国民生活金融公庫に申し込み見事ハネられました。

1ヶ月待たされた挙句、担当者の「純粋な車屋さんならまだいいんですけどね。前例がないのはねぇ。2,3回決算過ぎたらまた来てください」という言葉をいまだに覚えています。しかし、次に申し込んだ東京信用保証協会(創業アシスト)はその日に融資OKをもらいました。面接もほんの5分でした。

会社の設立

話は前後しますが、私の起業パターンは、自己資金準備・・・事務所借り・・・会社設立・・・古物商・・・創業融資、という順序でした。ここでは会社設立について述べます。

事務所審査も通り、備品を買って体制を整えると同時に会社設立の準備をします。私の場合は自動車を動かし(取引し)ながら自動車社会への貢献的事業をメインに展開したかったので、まず頭に浮かんだのがNPOという選択でした。東京都主催の設立予定者向け説明会や資料も手に入れて調べ始めます。

しかしここで念のために仕入れ、売りの核となるオートオークション会場に問い合わせたところ「NPOでの会員申請は例がないので検討しなければならない、時間がかかるだろうしダメになるかもしれない」との返答。食い扶持は大切なのでまずは普通の形態、株式会社でスタートすることに。

そうと決まれば早速設立の手配を。もちろん初期投資は抑えたいのでネットでなるべく安く設立してくれる行政書士や司法書士を探します。

確かに価格順で並べてみると「こんな安くていいの?」と言うところもありました。でも何となく不安・・・。私の経験上、「安かろう悪かろう」「士業だって仕事だから安いと当然数をこなさなければならないはず、できあがりを渡されて終わり、で済まされるのではないだろうか」という不安が強くなります。しかしネット上ではそんな細かいところまで書いていません。なので価格はほどほどで、印象が良さそうな先生を適当に抽出してメールをします。

一番最初にメールした先生は行政書士。大きな期待はしていなかったのですが、送信を済ませ「さて次を」とメールしようとしたらすぐに連絡が。

対応が良かったこと、そして何より「当面は経理のお手伝いもします。私は会計出身ですから」という強みにグラッときます。「あ、これでしばらくは税理士費用をケチれる!」そんなきっかけだったと思います(2年後、消費税申告が必要になったのを機にちゃんと税理士をつけましたが)。そして面談へ。

私の場合、役員予定者が合計3人いたのでその段取り、そして「自動車販売業」として必要な定款の目的を中心に打ち合わせをします。「あれも入れておいた方がいいですよ」「これも将来必要になるんじゃないですか」「これは絶対に入れておくべき」私の思いもつかなかった事業目的を次々提案してくれます。「あ、この人はイケるな・・・」そう感じた私はその場で「お任せします」と伝えることに。ついでではあったのですが「監査役(取締役3名の取締役会設置会社だったため必須)になってくれませんか?お金は微々たるものしか払えないと思いますけど」とまでお願いを。

「え?私でいいんですか?」なんと了承までこぎつけます。これで準備は終了。他の役員は札幌の人だったので郵送で必要書類を取り付け、あっという間に定款認証、会社設立完了、そして登記も完了します。初めて会った日から2か月ほどでしょうか(書類集めに結構時間を要したので)。

その後、経理的なこともありますから事業を開始してからも頻繁に先生には会うようになります。途中、税理士を入れても、会社規模を縮小し監査役を廃止してからも、いまだに頻繁に連絡を取り合っています。今は行政書士の先輩としていろいろご指南を受けることが多いですが。

古物商の取得

古物商許可は自動車販売業にとって生命線です。これがないと「何もできない」と言っても過言ではありません。古物商には様々な分類があり、私の場合は当然「自動車商」という分類です。

正直、私は「古物商」をナメていました。「こんなもん、申請してお金払えばもらえるだろう」、そんな感覚だったのです。確かに個人申請であれば自分一人ですから力技でできるかもしれません。しかし「法人許可」となるともうちんぷんかんぷん。「身分証明書?」免許証じゃないの?「登記されていないことの証明書?」初めて聞いた。「履歴(経歴)書?」就職活動じゃないんだから・・・。それを役員全員分、他にもあれやこれや。そして会社の書類。

たまたま管轄の三鷹警察署が事務所から近かったこと、最初に詳しい話を聞きに行った時の担当者さんの対応が親切だったことからこれは自分でやることに。ちょうど会社設立準備とタイミング(役員の書類を集めるのが一度で終わる)を合わせていたので良い暇つぶしになりました。

会社の印鑑、横判などは先に製作していたので古物商申請書類は作れます。足しげく警察署に通い、都度担当者さんにしつこいくらいに確認しながら準備をします。正直、「こんな面倒なら先生に頼めばよかった」とも感じましたが、一旦手を付けたので最後までやりきることに。

私が一番不安だったのは申請から許可が下りるまでの期間。事前に言われていたのは「2週間から長くて1ヶ月」。おいおい、その間全く仕事ができないじゃないか、という焦りもあったのでなるべく最短で許可されるように書類は完璧に仕上げる意気込みだったのです。

私の会社の創立日は平成18年3月22日。しかし実際に定款や登記簿謄本、印鑑証明カードをもらえたのは月末くらいだったでしょうか。そこから警察に直行して正式に申請。担当者さんに「大丈夫ですよね?これで大丈夫ですよね?問題ないですよね?」と何度も念押しして笑われます。あとは待つのみ。

申請から10日くらい経ったときに電話が。「おさくさん、許可出ましたよ」。あれ?早いな、と思いながらも警察に行って許可証を受け取ります。担当者さんから「早く出たよね、かなり早いよ。おさくさん頑張ったもんね、良かったね」とねぎらいの声をかけてもらいました。

その後、なんたら協会から書類や古物台帳と標板を買ってください、と言われていたので指定された番号に電話すると「じゃあ三鷹駅の南口で会いましょう」と言われます。「え?なんで?」と思いながらも指定の時間に指定場所へ向かうと自転車に乗ったおじいさんが来ます。「あんたおさくさん?じゃあこれ」と書類一式と標板を受け取り、お金を払います。

ここで「領収書、いる?」と信じられない言葉。「当たり前じゃ!」というと渋々貧疎な書式の領収書を作り始めます。これにはちょっと唖然としましたね。もっとちゃんとした組織かと思った。

その後しばらく経ってから「古物講習会」を受けさせられ、台帳の書き方や盗難品の買入れの防ぎ方、身元確認の仕方を教わって古物商の話は終了。

※現在は申請から1ヶ月少々かかります。標準処理期間が30日(営業日)とされているためです。

オークション会場加盟

オークション会場への加盟は古物商許可が必須条件とされています。あと名目上「古物商許可取得から1年以上」「他会員からの推薦」「不動産を持つ連帯保証人」「販売店舗」もほとんどの会場が条件としています。

でも結構曖昧なんですよね。私はバカ正直に役員さんにお願いして保証人になってもらい、知り合いの会員さんに推薦をもらい、その会員さんが当時そこのオークション会場のお偉方だったこともあって「古物商取得1年以上」を見逃してもらって会員になりました。

本当はその会場だけではなく、某日本一の会場の会員にもなりたかったのですがさすがににべもなく「来年いらっしゃってください」と帰されました。でもその会場は役員さんの会社が北海道で全国会員だったのでそこ経由で参加させてもらうことに。まあ多くの会場の会員になる必要性はないのですが。

結局その会場は2年後、仕事上で親密になった名古屋の会社の社長さんから直接お偉方さんに口利きしてもらい自社で会員になることができました。

中販連(私の場合は東京中販)は加盟していなかったんですけど、前職でお世話になった方が東京中販(JU東京)の会場の責任者になったことから「呼び出され(本当です)」てその場で入会手続き。「保証人?あんたならいらん。もうあそことあそこの会員になってるんだろ?」そんな感じでした。たまたま会場移転したタイミングだったので会員集めが必要だったのでしょう。

こう考えるとやはりこれまでの人脈や新しく作った人脈によって助けられてばかりです。そして入会審査や条件も「タイミング」や「実績」によって厳しくなったり緩くなったりすることがあるようです。しかし「古物商」だけはどんな場面でも必須です。

最後に

自動車業界、特に中古車販売に関しては非常に厳しい世界です。そこに敢えて参入しようとする方には「自分をよく見つめてほしい」そして「慎重、誠実であってほしい」と思います。自動車流通業界は一般的にダークな印象を持たれていることは誰もが感じていらっしゃるのではないでしょうか。

私はそれを払拭する志のある方を全面的に支援します。贅沢をし、高級車に乗り、豪邸を構え、高価なものを身にまとう。成り上がり、「社長」として成功して君臨するのなんてほんの一瞬です。一瞬だけ輝いてその後しぼんでいく方を私はたくさん目にしてきました。そんなことより「会社の永続性」こそが必要であり、これからの時代に最重要視されるべき点だと思うのです。そのために何が必要か、みんな口をそろえて言います「お客様第一に仕事をしていれば継続できる」と。じゃあ「お客様第一」とは一体何なのか。

みんなそれを考えていれば「ダークな印象」なんて持たれるはずはありません。火のないところに煙は立たず。やはり脱線する人が多いのでしょう。想像してください。何らかのリスクが現実になったときに自らを守りお客様に転嫁できるよう考えていませんか。転嫁できなければ逃げることを考えていませんか。「お客様第一」なんぞ言うは易し、自分の状況が変われば吹き飛びます。そこを貫き通せるかは「志」の強さによる胆力にかかっているのです

私も起業から6期までは自分でも信じられないくらい順調で、事業も拡大しました。実働2人であっという間に売上も一億越え。月販20台、拠点3か所、積載車2台を持つまでに。しかしちょっとした変化で環境はがらりと変わります。私はこれまでの経験でいつかそうなることは想定していたので、特段慌てることもなく先手先手を打って事業を縮小していきました。3拠点あった事業所も今では本社ひとつ。土地や積載車も早急に処分し、現地従業員に謝罪し再就職先も私が手配しました。

確かに力技で事業を継続することによって新たに得られた仕事もあったかもしれません。しかし確信のない「楽観」を自分に言い聞かせることほど怖いものはありません。これが楽天家で見栄っ張りであれば無理矢理その事業規模のまま借金をしてでも継続していたことでしょう。しかし私は将来を見据えてすっぱりとコンパクトにした結果、現在無理なく継続できているのです。我ながら行動もタイミングも素晴らしい経営判断だったと思います。絶好調だった時も、会社も自分も家族も贅沢をせず、常に見えない将来に備える、これも自分の性格、経験があるからこそ「勘違いしない」で済んだと考えています。

膨らみ過ぎた風船はいつか破裂します。まだ余裕はあっても針の方から近づいてくるかもしれません。その「針」は見えるはずです。そして膨らみ過ぎて「あ、そろそろヤバいかも」という感触も分かるはずです。その時に口をあけて空気を抜けるか、風船をしぼませることができるか。

自動車販売業は中途半端な仕事です。街の八百屋さん的な商売だけど動かす金額は大きい、だから八百屋さんには必要のない知識、法知識も必要なのですが、それを学ぼうともせず営業最優先で「売れや稼げや」で突進し、最終的には転倒してしまう人が多いのです。頭がいい、学歴云々ではありません。「社長」として学ぶべきこと、磨くべき能力、伸ばすべき人間力があるのです。

自動車販売業で起業を決断した方に最後に問います。

あなたにとっての「成功」とは何ですか?

これを読んで、即答できた方はきっと大丈夫です!応援します!力になります!

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